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泣き虫ハァちゃん

河合隼雄 新潮社 2007年

臨床心理学者河合隼雄の最後の著作です。
河合隼雄(1928-2007)は、丹波の篠山に生まれ育ちます。男ばかり6人兄弟の5番目です。
この本は、自伝ではなくてフィクションですが、下地にあるのは、自身の幼いころの思い出のようです。

ハァちゃんは、泣き虫で、戦時下の日本では男が泣くことは恥でした。泣き虫といってもいじめられたり叱られたからなくというだけでなく、感動したり、人との別れであったり、何かの拍子に心が締め付けられたりすると、勝手に涙があふれてくるのです。負け惜しみが強いくせに、涙が出るのです。
あるとき、母親が「ほんまにかなしいときは、男の子も泣いてもええんよ」といってくれて、ハァチャンはびっくりします。

幼稚園から小学4年生までの日々がつづられています。本当は、まだ続くはずだったのですが、急な病で倒れてしまいました。いつまでも読んでいたいようなやさしくユーモアにあふれたハァチャンの日々でした。
そして、読んでいて全然悲しくないのに、微笑みながら涙が出てくる本でした。

物語の後に、谷川俊太郎さんの、作者にささげる詩が載っています。
「来てくれる」という詩です。
これを読んでまた泣きました。
奥さまの河合嘉代子さんの跋文「『泣き虫ハァちゃん』のこと」もあります。

目次
男の子も、泣いてもええんよ
どんぐりころころ
青山の周ちゃん
みそしるサンタ
怪傑黒頭巾
川へ行こう
クライバーさん
秘密基地
あづまはや
作文はお得意
かもめの水兵さん
夜が怖い