地下鉄道

コルソン・ホワイトヘッド著 谷崎由依訳 早川書房 2020年

アメリカ合衆国南部に住む黒人奴隷が、奴隷状態から抜け出すために北部へ脱出しようとする。地下鉄道は、そのための手助けをする人たちで作られた組織のこと。ただし、この小説では、たんなる組織ではなく、実際に地下にトンネルを掘って作られた鉄道が出てくる。鉄道を乗り継いで逃げる娘コーラの凄惨な物語。

奴隷の生活のひどさ、差別をする人間の残虐さがこれでもかというほどリアルに描かれる。生き延びようとするコーラの心のありようが、普通の娘の心と少しも変わらないゆえに、より残酷にも感じられるし、同時に希望も感じられる。

これは、かつてのアメリカ合衆国を舞台にしているけれど、現代のことでもあり、世界中どこでも起こってきた、起こりつつあることでもある。