月別アーカイブ: 2023年10月

ブルーアウト

鈴木光司著 小学館 2015年

和歌山県串本の沖合で、トルコの軍艦エルトゥールル号が、台風にあって沈没したのは、明治23年のこと。その史実をもとにしたフィクション。
主人公は、串本でダイビングのインストラクターをする水輝。そこへ、トルコの青年ギュスカンがガイドを依頼する。
エルトゥールル号の遭難者の五代のちの子孫と遭難を助けた漁師たちの五代のちの子孫とのふしぎな邂逅。
エルトゥールル号乗組員のドラマと水輝の人生が、交互に描かれる。

老いを愛づる

中村桂子著 中公新書 2022年

著者は大阪府高槻市にある生命誌研究館の名誉館長。
老いや年寄りの生き方についての啓蒙本は多々あるが、今まで読んだ中で一番しっくりきた本。
男性の書いたものは、どうも違和感があるし、お金の心配のない人が老後について具体的なことを書いたものも違和感があるし、奥歯にものが挟まったようなものが多いなかで、本書は、人としての基本的な生き方を考えさせてくれてほっとする。

女たちの沈黙

パット・バーカー作 北村みちよ訳 早川書房 2023年

 

ギリシャの英雄アキレウスといえば、アキレス腱の名前のもとになった神話の世界の登場人物。
トロイア戦争を舞台に、リュルネソスの王妃ブリセイスが数奇な運命を語る。
アキレウスによって国が陥落し、ブリセイスはアキレウスの勝利品として奴隷に落とされる。
戦闘の場面はリアルで血なまぐさい。けれども、そのことで、生死のドラマを盛り上げている。
沈黙を強いられた女たちの想いと生きる力を訴える。

続編 The Women of Troy の翻訳が待たれる。