口訳古事記

町田康 著/講談社 2023年

古事記の現代語訳なんだけど、神さまたちが現代の関西弁で丁々発止やりあうのが、なんとも愉快。講談、というより、ほぼ落語。たしかに古事記ってナンセンスだし、笑えるよなあと思わせる。
たとえば、こう。

海幸山幸の一場面

父の神が事情を問うたところ、火遠理命は、「実は・・・・・」と兄の神の大事な釣り鉤を失くしてしまったことを打ち明けた。
「なるほど。でも、それ、なんとかなるかも」
「マジすか」
「マジです。ちょっとお時間頂戴できますか」
そういうと父の神は、海に向かって、
「みんな、ちょっといいかな。ちょっと集まってくれるかな」といった。

ホムチワケノミコがこっそりヒナガヒメの寝屋をのぞいたら、ヒメが蛇だった場面

「あかん」
思わず呟いたホムチワケノミコに側近は問うた。
「なにがあきまへんね」
「ちょっと長いどころやあらへん。蛇や」
「マジですか」
「嘘やおもたら、おまえも見てみいな」
「ほな、ちょっと、うわあああっ、蛇ですやん」
「大きな、声出すな」
「あかん、今、まともに目ぇ合いましたわ」
「そやさかい大きな声、出すな、ちゅってんね」
「どないしまお」
「逃げよ」

こんなに気楽に楽しめる古事記は初めて!