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蛇 不死と再生の民俗

谷川健一著 冨山房インターナショナル 2012年

魔性を持った動物と人間との間の戦慄するような親和力は、いつごろからはじまったか。
それは少なくとも縄文時代中期、考古学でいう勝坂式土器の時代までさかのぼれる、と私はおもう。

という冒頭から、どきどきする。
昔話の異類婚姻譚を思い出すからだ。
人ー蛇ー神と、自在に変化する昔話の登場者に魅力を感じている。
著者谷川は、民俗学を「神と人間と自然との交渉の学である」と定義する。
そして、各地を歩きながら、さまざまなところで出会った物・事・言葉を習合して分析する。

目次
第一章 蛇巫の誕生とゆくえ
蛇巫の誕生/龍の文様の渡来/信州の蛇信仰と九州山地/琉球・朝鮮の三輪山伝説/蛇を祀る/蛇と百足/蛇と雷/毒蛇の神罰/真臘国の蛇王
第二章 蛇と海人の神
和の水人の信仰/死と再生の舞台/蝮の由来/海蛇ー海を照らす神しき光/龍蛇神をめぐる神事/かんなび山の龍蛇信仰/龍蛇の末裔/潜水の方言スム/潜りの海人と海蛇/古代海人と蛇の入墨/蛇の神と地名/ウズー海蛇類の総称/蛇と虹/蛇と不死/口笛と龍神
インタビュー 蛇と龍をめぐる民俗
解説 蛇が神であった世界(川島健二)

口訳古事記

町田康 著/講談社 2023年

古事記の現代語訳なんだけど、神さまたちが現代の関西弁で丁々発止やりあうのが、なんとも愉快。講談、というより、ほぼ落語。たしかに古事記ってナンセンスだし、笑えるよなあと思わせる。
たとえば、こう。

海幸山幸の一場面

父の神が事情を問うたところ、火遠理命は、「実は・・・・・」と兄の神の大事な釣り鉤を失くしてしまったことを打ち明けた。
「なるほど。でも、それ、なんとかなるかも」
「マジすか」
「マジです。ちょっとお時間頂戴できますか」
そういうと父の神は、海に向かって、
「みんな、ちょっといいかな。ちょっと集まってくれるかな」といった。

ホムチワケノミコがこっそりヒナガヒメの寝屋をのぞいたら、ヒメが蛇だった場面

「あかん」
思わず呟いたホムチワケノミコに側近は問うた。
「なにがあきまへんね」
「ちょっと長いどころやあらへん。蛇や」
「マジですか」
「嘘やおもたら、おまえも見てみいな」
「ほな、ちょっと、うわあああっ、蛇ですやん」
「大きな、声出すな」
「あかん、今、まともに目ぇ合いましたわ」
「そやさかい大きな声、出すな、ちゅってんね」
「どないしまお」
「逃げよ」

こんなに気楽に楽しめる古事記は初めて!